小籔 実英さん
人生は山あり、谷あり。穏やかな日もあれば、嵐の日もあります。苦しみや悲しみで立ち止まってしまったとき、私たちは何を思えばよいのでしょう。丹波あじさい寺住職・小籔実英師に本書・詩画とエッセイ集へ込めた願いを聞きました。
先日、年配のご婦人から電話を頂戴しました。「この本を入院中の友人に贈ったところ題名を見ただけで心が楽になったと言うてくれました。ゆっくり読ませてもらいますわ、とえらく喜んでもらえました」との内容でした。 この方の友人のように、入院加療中の人は「退院できるんやろか」と不安にさいなまれています。そんな時、「心配せんでもよい」と言われただけでも随分と心が癒されるのではないでしょうか。心が元気になれば、体も健康を取り戻すことができます。行き詰まりや不安を感じている方に、この本を手にしていただいて、少しでも心の負担を軽くし、新たな光を見つけてもらえたら、という願いがありました。

「生まれつき能力がない」と思い込み、劣等感を抱える方は少なくないでしょう。人間は母親の胎内から生まれ出てきますが、大本は仏さま、神さま、大自然の力によってこの世に送り出されてくるわけです。誰もが必要あってこの世に生まれ出てきたということ。そこには、あるがままのあなた自身の姿形、能力、性質で、力いっぱい生きていってほしいという神仏の願いが込められているのではないでしょうか。 ともすると私たち人間の眼は、物事を社会的な優劣で判断してしまいがちです。しかし、仏さまや神さまは私たちの個性を見てくださいます。「勝ち」「負け」といった価値基準ではなく、自分らしく生きていくことが一番、素晴らしい人生につながる。そういう生き方の尊さを、詩と画をとおして読者にお伝えしたいと思いました。
愛別離苦(あいべつりく)をはじめ、たくさんの苦しみを味わいながら、私たちは人生を歩みます。耐え難い苦悩に遭遇した時、「なぜ私だけがこんな目に遭わなければいけないのか」と不幸を嘆き、落ち込むのではなく、〈苦しみが自分を鍛え、人生を高めてくれる糧になる〉と受けとめてみてはどうでしょう。 本書に「勝って大きくなり 負けて深くなる 私の人生にマイナスはない」という一編の詩画を綴(つづ)りました。人生では、思わぬ成果を得るときもあれば、一生懸命に努力しても、望んだ結果が得られず落胆してしまうこともあります。これが世の常ですから仕方ありません。物事に振り回されず、どんな境遇にあっても人生の糧につなげようと心がけていけば、生きる力を得られるのではないでしょうか。成功して自信を得れば、今までの自分よりも成長できます。挫折した時は、「自分の何が悪かったのか」と真剣に思い悩みます。この自己を見つめる行為が人生を深めてくれるのです。痛みを知ると、人に優しさを与えることもできるようになれるでしょう。 人生にマイナスはないのです。

1951年、京都府福知山市観音寺に生まれる。高野山大学密教学科卒業後、17年間高校教師を務める。関西花の寺第一番札所丹波あじさい寺・観音寺住職。心の豊かさを求めて『あじさいの会』を主宰。詩画作家。著書に『心に悲しみをもったとき』(善本社)『悩んでこそ人生』(佼成出版社)など多数。